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施工管理の仕事が危険と言われる理由
施工管理士は現場監督として建築現場にいることが多い職業です。建築現場では、どれだけ防ごうと対策を立てても、痛ましい事故が起こってしまうリスクはゼロではありません。
そんな中で現場の安全管理は施工管理士にとって大切な仕事の一つ。過去の事故の事例からどのような危険があるのかという事を知り、対策・予防策を考えて働く人々の安全をしっかり守る現場を作っていきましょう。
建築現場での事故の実際
墜落・転落事故
建築現場の事故の中で多いのが墜落・転落事故です。例えば、高層マンションの建築中に鉄骨の上でボルト締め作業を行っていた作業員の安全帯が外れて、作業員が約17メートル落下して死亡した事故がありました。この事故では作業員が適切に安全帯を使用していなかったのが直接的な原因です。
このような墜落・転落事故は建築現場でおきる事故全体の約17%(墜落・転落20,094件÷全産業117,910件)の割合を占めています。墜落・転落事故の多くは、「手すりの設置が不十分だった」「足場の固定が完全に行われていなかった」「安全帯を使用していなかった」などの基本的な措置が行われていなかったのが原因です。現場全体の安全管理体制の意識の甘さも事故の要因の一つと言えるでしょう。
厚生労働省でも、「第13次労働災害防止計画」のなかで建設業の労働防止対策の重点施策として指定。建設業界の死亡事故でもっとも多い「墜落・転落」を防止するために、フルハーネス型安全帯の着用を義務化する対策を立てるなど業界全体としても動きは始まっています。
※参照元:(PDF)厚生労働省「第13次労働災害防止計画」 (https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000197907.pdf)
建築機械・クレーン等の事故
建設機械に挟まれる事故や、倒れた機械の下敷きになる事故も度々発生します。アースドリル掘削機でケーシングを吊り上げて旋回したところ、掘削機が重さに耐えきれず、工事現場の外の一般道に倒れる事故がありました。この事故で一般道の歩道を歩いていた一般人が死亡。4人が重軽傷を負いました。
こういった建設機械・クレーン等の事故の原因は「用途外の使用をした」「オペレーターが後方確認を怠った」「重機誘導者を配置していなかった」などがほとんどです。基本的な対策を守っていれば防げる事故が多く起こってしまっています。
倒壊・崩壊事故
建設用の足場自体が倒れてきてその下敷きになる事故もあります。過去には旋回したクレーンのワイヤーが足場にひっかかり、倒れた足場の下敷きになった作業員が死亡する事故が起きました。
「掘削するときに土止めを設置していなかった」「作業開始前の点検を怠っていた」などの原因で倒壊・崩壊事故が起きています。
人手不足も原因の一つ
ゆるやかに起こりつつあった建設業界の人手不足は、リーマンショック以降一層の拍車がかかりました。リーマンショックによって国内の建設需要が激減し、職人たちの仕事がなくなり、引退をしたり他職種へと転職したりといった事態が加速したからです。その後景気が回復し工事量が増えてきましたが、職人は戻らず、若者の建設業界離れも進み現在も人手不足が続いています。
職人・作業員の負担増が事故の引き金に
職人や作業員の人数の確保も施工管理の大切な仕事の一つです。人数が少ないからと言って工期を延ばすことも、工程を変更することもできません。だからといって人手不足のまま仕事を進めていくと、一人の仕事量が増えます。一人ひとりの負担が大きくなり、疲労もたまって注意力が散漫になってくるケースも少なくありません。そういったところから小さなミスが重なり、通常ならば必ず確認していた工程を確認し忘れてしまうことで、考えられないようなタイミングで事故が起きてしまうのです。
人手不足に対する業界の取り組み
建築業界全体でも、労働環境の改善や待遇改善に力を入れ「きつい・汚い・危険」の3Kと言われているイメージを払拭する努力をしています。特に長時間労働や低い給与水準などは改善必須としてあがっている項目です。また、若年層が建設業に触れる機会を増やすための取り組みも各地で行われています。例えば静岡県にある富士教育訓練センターでは各園の建設業界や工業高校と連携して生徒に技能体験研修を実施。他の県などでも生徒だけではなく、保護者にも見学会を実施するなどして若者の雇用の促進にも取り組んでいます。
会社の安全管理に疑問を持ったら
工事現場の安全をつくる「建設業労働災害防止協会」では厚生労働省の「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」を下敷きに、現場のストレス管理も含め、労働災害を防ぐための「COHSMS(コスモス)」の普及に努めています。COHSMSは建設業の特性を考慮したマネジメントシステムです。
しかし、こうした協会主体の大きな取り組みだけでは現場での危険を完全に防ぐことはできません。業界に関わる全ての人の安全管理への意識向上、会社ごと・現場ごとの安全管理能力の高さが必要になってきます。もしも、自分の会社の安全対策に関して疑問を持つようであれば、一度他の会社を検討してみるべきでしょう。自分や大切な仲間の命にもかかわることなので、迅速な判断と適切な行動が大切です。